獣は禁断の果実を蝕むのか。

「……なんだ?」


グッタリと胸の中に落ちた私を抱きしめながら、いたって冷静な専務。


「キャッ!!!」


九重部長の登場に、ハッと目を覚ました。


慌てるのは私一人。


急いで乱れた服を直して、専務のひざの上から降りた。


「マーキング、増えてんぞ。」


そう言いながら、襟元のブラウスに手が伸びた。


「触るな!!!」


専務の張り上げた声に、私がビクッと体を震わせた。


「っんとに、器の小せぇ男だな。」


伸ばした指を引っ込めながら、大きなため息をついた。


「人の時間をジャマしておいて、それを言いに来たわけですか?」


眉をゆがめながら、冷酷な瞳で九重部長をにらみ上げた。
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