ふたつの背中を抱きしめた



「式、12月かあ。じゃあクリスマスカラーのドレスにしようかな。」

電話の向こうで、彩ちゃんが楽しそうにそう言った。

今日、休日の私は式に招待する友達に電話をして日取りが決まったことを報告していた。

「ごめんね、忙しい時期に。でも今年中に式挙げたくって。」

「3日でしょ、年末ってワケじゃないし大丈夫だよ。それに12月の式場ってイルミネーションとか凄そうで楽しみ!」

「うん、大きいツリーも出るよ。すっごい綺麗なの。楽しみにしてて。」

「いいなぁ、素敵な式に素敵な旦那様。ホント真陽は幸せモノだよね。羨ましい。」

「えへへ、ありがとう。後で招待状送るからね。」

「うん、ウェディングドレス姿、楽しみにしてるからね。またね。」


彩ちゃんとの楽しげな電話を切って私はひとり自嘲の言葉を吐き出す。

「最低だな、私…」

沢山の人に祝福してもらえばもらうほど、裏切りの数は増えていく。

私はまるで自分で自分を追い込むように結婚式の準備を進めた。

それがこの出口の見えない関係に答えをくれるような気がして。


「さて、次は…」

招待予定の人のリストを見ながら携帯の電話帳を調べていると、突然着信のコール音が鳴った。

驚いて画面を見るも

「…?知らない番号だ。」

私はおそるおそる電話に出てみた。

「…もしもし、櫻井です。」


「…真陽?」


電話の向こうのその声に私の心臓が大きく音をたてる。


「…柊くん…?」



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