ふたつの背中を抱きしめた
6章 過ちと呼ばないで

1.蕃茄は夢を見る





子供達を送り出してしばらくすると、日勤のリエさんが出勤してきた。

「あれ?柊くん夜勤だったの?」

スタッフルームで引き継ぎをホワイトボードに書いている柊くんにリエさんが驚きの声をあげる。

「園長、用事が入っちゃったから代わりに急遽都合のつく柊くんが来てくれたの。」

相変わらず私と2人で居る時以外は無口な柊くんに替わって私が説明すると、リエさんはあからさまに怪訝な顔をし

「じゃあ真陽ちゃんと夜2人きり?いくらなんでも男女2人で夜勤って、そんなシフトいいの?」

と不服そうな声を上げた。

その言葉に、スタッフルームにいた私と加古さんの間に緊張が走る。

柊くんはなんの表情も浮かべず黙々とホワイトボードに向かっていた。

「仕事だし、子供だっているし。」

取り繕うように笑って言った私にリエさんは

「婚約者さんが知ったらイイ顔しないんじゃない?こういうの。」

と小声で耳打ちして行った。



帰り際に、加古さんが

「マルちゃんには一応口止めしとくけど…相手は子供だから、期待しないで。」

と私にだけ小声で言った。
そんな加古さんにペコリと頭を下げ、園を出ると

園門の前で先に出た柊くんが待っていた。


< 131 / 324 >

この作品をシェア

pagetop