ふたつの背中を抱きしめた



朝の明るい部屋の中で抱かれるのは、不思議な気分だった。

カーテンをひいても明るい光景にさすがの柊くんも

「…照れる。」

と言ったけれど。

私は恥ずかしさよりもただただ夢中で柊くんの情熱を受け止めた。


2度目の裏切りは、前回よりハッキリと色々なモノが壊れていくのを感じた。


私から誘った。


もう言い訳は効かない。


私は明白に、綜司さんを裏切ったのだ。



行為が済むと、柊くんは私を抱きしめながら眠った。

強がってはいたけれど、昨夜は一睡もしていないんだから眠くて当然だ。

柊くんは深い寝息をたて始めた。

無防備に眠るそのあどけない寝顔を見ながら、

綜司さんはもうとっくに会社に行っただろうなと考える。

夜勤だと朝はすれ違いで会えないのだが
まさかそれがこんな風に柊くんとの時間を作るなんて皮肉な話だ。


昨夜は沢山寝たはずの私も、柊くんの腕枕で目を閉じると再び深い眠りに堕ちていった。

まるでこの現実から逃げ出すように。


窓の外では朝の街の動きだす気配がする。



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