ふたつの背中を抱きしめた


……悔しいよ、真陽…。



柊くんは何度もそう言った。


「…どんなに抱いたって、約束を交わしたって、俺は恋人じゃないんだって…痛いぐらい思い知らされた。」



その痛みを

きっと、私は分かっていた。

最初から、分かっていた。


綜司さんのものでありながら、柊くんの手をとった時点で。


そしてきっといつか柊くんが望むであろうコトも

私は、分かっていたんだ。



「…俺、もうやだ…。

今まで…婚約者がいる人を好きになったんだから仕方ないんだって、

俺の方が後から好きになったんだからしょうがないんだって、我慢してきたけど…」


「柊くん…」


私の心音が早くなる。

またひとつ、目の逸らせない現実が迫っていることに。



「……お願い真陽…。


…婚約者と…別れてよ……。」





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