ふたつの背中を抱きしめた


その言葉に、今度は私が困惑の表情を浮かべる。


全てをさらけ出した綜司と、厳粛な神様の前で今更気持ちを隠すのも憚られたけれど。


頷こうとして、結局躊躇して

私はただ俯いて足元の床を見つめただけだった。


そんな私の様子を見て、綜司は小さく息を吐き出した。


「…ゴメン…また君を追い詰めるようなコト聞いちゃって。

…分かってる、真陽に甘えて追い詰めてボロボロにしてるのは僕なんだって。…分かってるんだ…。」


そう言った綜司に驚いて、私は顔をゆっくりと上げた。

真っ正面から見つめる綜司と視線が絡まった。

透明感のある琥珀に近い黒の瞳が私を捕らえている。


「…真陽、ごめん。もう少しだけ僕に時間をくれないか?」


綜司は、強い意思をこめた口調ではっきりと言った。


「もうすぐここに立つ僕らは偽りの夫婦だ。

けど、僕は必ずキミの隣が相応しい本当に強い男になるよ。

キミの全てを…何もかも受け止められるほどに。

その時 、もう一度本当の僕を見て欲しい。

そして…選んで欲しい。

その時、もし君があの男を選んだとしても、僕は今度こそそれを受け止めるから。

…だから、僕が強くなるのを

もう少しだけ、待って欲しい…。」

と。



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