ふたつの背中を抱きしめた



「皆さん、勤務中に呼び出しちゃってごめんなさいね。集まってくれてありがとう。急なんだけれど、今日はちょっとお知らせがあります。」


穏やかに笑顔で言った園長の脇で、柊は真っ直ぐに皆の方を見ていた。

そんな2人の様子に、悪い報せではなさそうだと密かに安堵する。


それにしても。


私は皆の前に立つ柊の姿を驚きと感心を籠めた瞳で見つめていた。


4月に皆の前で紹介された時は

柊はポケットに手を突っ込んだままずっとそっぽを向いてて

その時私は『なんだこの子は』ってビックリしたんだっけなぁ。


…成長したんだな。柊。


今こうやって、背筋を伸ばして堂々と皆の前に立つ柊を見ながら


私は1人密かに喜びを噛み締めていた。



ところが。

園長がニコニコしながら続けた話に

私は喜びも束の間、耳を疑った。



「えー、今までボランティアとして当園に尽力してくれた柏原柊くんが本日付でこちらを辞めるコトになりました。」



あまりに急で唐突なその言葉は

なかなか私の頭に入っていかなかった。




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