ふたつの背中を抱きしめた


「…淋しく…ないの?」

私は窺うように聞いた。

柊くんは書類から視線をこちらへ上げると私を見つめたまましばらく黙っていた。

「…柊くん?」

「…いなきゃ、ダメか?」

「え?」

「友達っていなきゃ、ダメなのか?」

柊くんに逆に質問されてしまって私は答えに詰まった。

「ダメって事は無いけど…いた方がきっと楽しいと思う。」

私の言葉に、再び柊くんが黙る。

怒らせてしまっただろうか。

踏み込み過ぎた事を言ってしまっただろうか。

私はだんだん不安になってきた。

「…だって…」

柊くんが、口を開いた。

「だって、そんなの欲しくない。」

その柊くんの言葉は、決して強がりやウソではなかった。

けど。

少しだけその言葉を発するのに躊躇があったのは、多分、…多分、私の反応を窺ってたから。


友達なんか欲しくない、いらない。でも。


柊くんは、私との距離を縮めたがっている。


「柊くん。」


賭けだった。


失敗するかもしれない。

でも、もしかしたら。

柊くんの心の扉が、開くかもしれない。


私は、私を見つめる柊くんの黒い瞳を見つめ返しながら言った。


「…私と…友達に、ならない…?」


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