ふたつの背中を抱きしめた


寝呆けた頭を覚ますため啜ったコーヒーは本当に美味しくて、私は幸せのため息をついた。


しっかり作られた朝食はどれも美味しくて。


綜司さんの料理の上手さに、私は改めて感心する。



綜司さんてば本当になんでも出来る。

手先も器用で、学生の頃は運動も勉強も完璧だったという綜司さん。

以前、うちに遊びに来た綜司さんの学生時代の友人がそんな彼を凄く誉め讃えていた。

「浅葉はスゴいんだよ。中学ではサッカー部キャプテンで県大会まで行くし高校では生徒会長で憧れの的だし。それでいて成績も常にトップなんだから適わないよなぁ。」

私は私の知らない綜司さんのあまりに華々しい学生時代を聞いて目をしばたかせた。

スゴい、綜司さん。
どれだけ頑張り屋なの。


「大学でも人気者でさ。サークル幾つも誘われて掛け持ちしてたよなぁ。」

まるで自分の事のように誇らしげにそう話したその人は、帰り際にそっと私に

「イケメンで金持ちだからアイツ目茶苦茶モテてたんだよ。超倍率を勝ち抜いて彼女になれた真陽ちゃんはラッキーだったね。」

と、いらん情報を耳打ちして帰って行った。

それを聞いてからしばらく、私は自分が綜司さんと釣り合ってないんじゃないかと気に病んだり
学生時代きっと素敵な彼女がいたんだろうなと考えたり、悶々とした日々を過ごした。


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