涙空



お父さんのその瞳に映る自分は、きっとどうしようもないくらい弱々しい人間なんだろうな。

そんなことを、ふと思ってしまった。自分自身が嫌になる。


吐き出しそうになる溜息を押さえ付けるように飲み込んだ。

…なんだか気持ち悪い。




「別に、由奈と同じ道を歩けって言ってるわけじゃない。佳奈は佳奈で、行きたい道を歩けば良いよ」

「…行きたい道?」

「やりたいことをやれば良いよ」

「…、」




『やりたいことをやれば良いよ』



その言葉を、脳裏で復唱した。ぐるりぐるり、脳裏で駆け回るコトバ。


すると次の瞬間、お父さんはふっと悲しさに揺れた顔を晒して、言った。




「…俺と由奈が死ぬまでは、見守ってられるんだから」



< 269 / 418 >

この作品をシェア

pagetop