涙空
▼利己主義者




――――――…



「…だから幼稚園教諭になりたいって思ってたんだよ、中学のときから」

「……」




全てを話し終えると、暫しの間、静寂がこの場を包んだ。


それを割ったのは隣に座っていた郁也だった。

私が話している途中、彼はなにも言って来なかった。相槌を打つこともなく、ただ静かに私の話に耳を傾けていた。




「…母親を亡くしてるのは知らなかった」

「…言ってなかったからね。…ごめん」

「…」




中学二年のときは郁也とはクラスが違ったから。

多少噂は流れたんだろうけど、クラス数も結構あったし、知らない人は知らないと思う。




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