涙空



ばたんと閉められた扉を静かに見つめる。


おいおい、いい年した父親が頭なんて撫でるか、普通。

撫でられた髪にそっと指を伝わらせてみる。父親譲りの真っ黒な髪は、もう少しばかり艶が欲しいと思う。




「…明日」




作ってやる、って。
相変わらずな口ぶりに、つい笑ってしまう。

私の父親は周りが言うに若々しいらしく。いや、私も若々しいなあとは思うけど。

とても高校生の娘を持ってるようには見えない。いや、血の繋がった父親だけどさ。




「…寝ようかな」




また、呼びに来てくれるだろうし。次ノック無しに扉開けたら殴ってやろう。よし決めた。

なんだか安心する。…あんな風に撫でられたからだろうか。



瞼を下ろせば、嫌なことは脳裏から吹っ飛んでしまった。



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