夢でいいから~25歳差の物語
「落ち着きました?」
気付くとわたし達は近所の公園のベンチに座っていた。
あ、そうか。
あの後、なぜか涙が出てきてしまって。
それで青山先生にここまで連れて来られたんだ、きっと。
「あっ、すみません。ご迷惑をおかけして…」
わたしは慌てて立ち上がり、頭を下げた。
「どうか頭をお上げ下さい」
青山先生の言葉にわたしは顔を上げた。
ダメだなぁ。
青山先生にはカッコ悪いところばかり見せてしまっている。
そんなわたしの思いなんてつゆ知らず、彼は言った。
「失礼ですがあなたは、名前は何とおっしゃるのですか?」
「えっ?」
驚きのあまり、わたしはまぬけな声を出してしまった。
「あ、すみません。今のはお気になさらないで下さい」
そう言う青山先生の照れたような表情が、わたしの胸の中をくすぐったような気がした。
「水橋睡蓮と申します」
「そうでしたか。素敵なお名前ですね」
「あ、ありがとうございます」
嬉しくて恥ずかしくてわたしはそれ以上は何も言えなくて、ただ沈黙の中にいた。
ざわっと風が木の葉を揺らす。
オレンジ色の木漏れ日に青山先生の端正な横顔が照らされ、わたしは息を飲む。
「大丈夫ですか?」
ふいに彼が言った。
「スーパーでお会いした時からずいぶん時間が経っていますが、お子さんが心配しているのでは」
「大丈夫です。今日は友達と遊んで帰りが遅くなるそうなので」
確か流星は「課外のない日曜日こそ遊び三昧する日だ」とか言って出かけたはず。
「そうですか」
彼は心から安心したような微笑をこぼす。
その笑顔にどぎまぎしたわたしは青山先生から目を逸らし、夕焼けを眺めた。
それはいつもの濡れたようなオレンジ色をしていた。
何も変わっていない。
具体的な日時は覚えていないが、前に1人で見た夕日もこんな感じだった。
だけど隣には今、青山先生がいる。
あの日と変わらない夕焼けの中でわたしだけが変わっていた。
気付くとわたし達は近所の公園のベンチに座っていた。
あ、そうか。
あの後、なぜか涙が出てきてしまって。
それで青山先生にここまで連れて来られたんだ、きっと。
「あっ、すみません。ご迷惑をおかけして…」
わたしは慌てて立ち上がり、頭を下げた。
「どうか頭をお上げ下さい」
青山先生の言葉にわたしは顔を上げた。
ダメだなぁ。
青山先生にはカッコ悪いところばかり見せてしまっている。
そんなわたしの思いなんてつゆ知らず、彼は言った。
「失礼ですがあなたは、名前は何とおっしゃるのですか?」
「えっ?」
驚きのあまり、わたしはまぬけな声を出してしまった。
「あ、すみません。今のはお気になさらないで下さい」
そう言う青山先生の照れたような表情が、わたしの胸の中をくすぐったような気がした。
「水橋睡蓮と申します」
「そうでしたか。素敵なお名前ですね」
「あ、ありがとうございます」
嬉しくて恥ずかしくてわたしはそれ以上は何も言えなくて、ただ沈黙の中にいた。
ざわっと風が木の葉を揺らす。
オレンジ色の木漏れ日に青山先生の端正な横顔が照らされ、わたしは息を飲む。
「大丈夫ですか?」
ふいに彼が言った。
「スーパーでお会いした時からずいぶん時間が経っていますが、お子さんが心配しているのでは」
「大丈夫です。今日は友達と遊んで帰りが遅くなるそうなので」
確か流星は「課外のない日曜日こそ遊び三昧する日だ」とか言って出かけたはず。
「そうですか」
彼は心から安心したような微笑をこぼす。
その笑顔にどぎまぎしたわたしは青山先生から目を逸らし、夕焼けを眺めた。
それはいつもの濡れたようなオレンジ色をしていた。
何も変わっていない。
具体的な日時は覚えていないが、前に1人で見た夕日もこんな感じだった。
だけど隣には今、青山先生がいる。
あの日と変わらない夕焼けの中でわたしだけが変わっていた。