夢でいいから~25歳差の物語
そして気になることがもう1つ。


「俺のことはいい!さっさと逃げろ!さもないと…お前のこと、嫌いになるぞ!!」


あれはどういうこと?


ちょっと期待していたのに、あれから何も言ってこない。


「うん。だって本当は面白いよ、あの先生」


ふいに光森先生のセリフを思い出す。


あ、そうか。


確か、それを聞いた私は「love」ではなく「like」なのか、と思ったんだよね。


多分それと同じだ。


先生があの時言った「嫌い」はきっと「don't love you」ではなく、「don't like you」だったんだ。


だってあの人は、あの人が愛しているのは他でもない私の母だもの。


知っていることなのに胸がズキッと痛む。


あの家で今夜も先生は母に愛を囁くのだろうか。


そして永久の愛を誓い、あの男性らしさを思わせる美しい手で母を抱きしめるのだろうか。


見てもいない映像が、頭の中に水のように流れ込んでくる。


そんな嫌な映像を振り払うように私は教室に走って戻った。


教室ではクラスメート達がみんな同じ話題で騒いでいた。


さすが進学校。


教室は受験モード一色だ。


「アタシ、国公立クラスにいるけど私立大行くの」


「ワタシも」


「オレは国立だな。それで医学部」


「よっ、医者の卵!」


私だって受験生。


恋にうつつを抜かしてばかりはいられないのはわかっている。


せめて今だけは…受験のことを考えなきゃ。
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