情炎の焔~危険な戦国軍師~
-サイド左近-


「…」


友衣さんが酒を取りに行ってくれている間、俺はぼんやりしていた。


可愛らしい少女のような彼女だが、妙に色気のあるように見えるのはこの前初めて結ばれたせいか。


彼女に女らしい顔をさせているのが俺だと思うと、左胸の鼓動が早くなった。


「…そんな簡単に可愛い、だなんて…」


男慣れしていなくて。


「それくらいとはなんです。奇襲っていうからそうかと思ってましたが、三成様に聞いたら一歩間違えれば左近様まで死にかねない危ない方法だって言うじゃないですか。本当に心配してたんですからね」


心配性で。


「私、別に可愛いわけじゃないですしこれといった特技もないですから」


自分に自信がない。


だが。


「お守りしたいんです。あなた達を」


芯はとても強い。


彼女は兵士としては決して強い人間ではない。


だが、だからこそ守りたい。


女であるのに、守りたいもののために兵士になるというのは並々ならぬ覚悟を持っていないと出来ないことだ。


きっと、誰かをここまで好きになったのは初めてかもしれない。


弱い所も、悪い所も全て抱きしめたいなどと思ったことは一度もなかったから。


恋はしても、愛してはいなかったのだろう。


「男を知らない女をからかって弄んでばかりいると、いつか火傷するぞ」


いきなり殿の言葉を思い出す。


今まで呆れ顔をしながらも女についてまったく口を出さなかった殿が、時々友衣さんに関しては言ってくるようになった。


まさか。


「殿は友衣さんのことを…?」


直後、首を横に振る。


いやいや、主だというのにとんでもないことを考えてしまった。


彼女は未来から迷い込んで来たから、きっとそれで気にかけてやってるだけなんだろう。


あの方には奥方様も華もいる。


そういえば酒を取りに行ってくれているはずの友衣さんがまだ帰って来ない。


一体どうしたのだろう。
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