情炎の焔~危険な戦国軍師~
第21戦 主のために
「疾風。夜にごめん」


厩に来た私は疾風に話しかける。


番の人には怪しまれないように、お酒が切れたから買い出しに出ると言っておいた。


「でも三成様だって私が1人で追っかけてきたってわかったら、きっと私の本気をわかってくれるんじゃないかなって思うの」


女が夜道を単騎で追いかけてきて、なおも説得。


これにはさすがの三成様もお手上げだと思っている。


「じゃ、行こうか」


闇の中、佐和山城から大垣城に向かった時の記憶を頼りに進む。


(怖い…)


現代みたいに街灯があるわけじゃないから、持ってきた提灯だけが光源だ。


おまけに林の中だから、こうもりか何かのバタバタという羽音が気味悪い。


その時。


ヒュン!


「!」


何かが目の前を横切った。


「何…?」


疾風から降りて近くの木に近寄ると、そこには1本の矢が刺さっている。


まさか私を狙って?


ゾクッと背筋が凍る。


すると暗闇から下卑た声が聞こえた。


「おう、そこのお侍さん。ここに来たからには有り金全部置いていってもらおうか」


賊だろうか。


3、4人のみすぼらしい風体の男達がじりじりと寄ってきた。
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