情炎の焔~危険な戦国軍師~
「バカな。奴は上杉征伐に向かったのではなかったのか」


三成様はまだうろたえている。


とりあえず天守閣から敵陣を眺めたが、靄(もや)のせいではっきりとは見えない。


どうやら西軍の先鋒の隊が美濃赤坂の敵陣に入っていく大部隊を見つけ、それでわかったらしい。


三成様は慌てて、来たのが本当に家康殿であるか確認させるために先峰の部隊に使いをやった。


さらに左近様達は味方の各陣地の見回りに出て行く。


ここ数日、動きがなくて心のどこかでのんびり気分になっていたせいか、私はどうしようもない焦燥感に襲われていた。


ここまで来たら、もう真っ向勝負は避けられない。


勝負は明日だ、明日しかない。


この時代にいるはずのない私が天下分け目の大合戦に加わることで、事態はどう動くのだろう。


いや、勝たなければならないんだ、絶対。


明日に備え、私は竹刀を握りしめて庭へ駆け出した。
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