情炎の焔~危険な戦国軍師~
第47戦 遺志を継ぎし者
一方、大坂では動向があった。


牢人が続々と大坂城に集結しているのである。


その数およそ12万。


これを聞いた駿府城の家康は出陣命令を出す。


こうして慶長19年11月。


大坂冬の陣が勃発。


戦の前、とある将は大坂城を背に思考を巡らせていた。


「大坂城は北に大河、東に湿地、西に湾がある。しかし、南には何もない。ここに出城を築けば…」


その出城は通称、真田丸。


「真田丸の南にある篠山にいる真田軍の投石と鉄砲が煩わしい。篠山にいる真田どもを夜襲せよ」


「篠山に来たが、いやに静かだな」


「伝令!篠山はもぬけの殻です。真田はすでに退いたようです」


「くそ、真田め。我らをたばかりおって!急ぎ真田丸を攻略せよ!」


「何、真田丸を囲んだ?あれほど真田丸には手を出すなと言ったはずだ!」


「よし、徳川方の兵、前田軍の誘引に成功した。鉄砲隊、今だ、放てー!!」


こうして冬の陣最大の戦い、真田丸での戦いは大坂城方の鉄砲と空堀(水のない堀)の前に徳川が屈する形になった。


徳川方の将、前田利常軍およそ300騎が犠牲になり、数千の死傷者が出たのである。


その後豊臣と徳川は、1度は講和を結んだものの、再び不穏な空気が流れ始める。


「講和に託(かこ)つけて堀を埋めさせてやったわ。これで大坂城は丸裸同然じゃ」


「家康め、最初からこうするつもりで講和を…!」


戦国最後の戦い、大坂夏の陣の兆しがゆっくりと見え始めていた。
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