情炎の焔~危険な戦国軍師~
「もう後には戻れない。上杉家との作戦はすでに始まっている。ここで中止しようものなら上杉家はどうなる?狸の軍団に殲滅されてしまう。そのためにもオレ達はやらなければならない」


「なぜ、事前に私に相談してくれなかった?」


「…すまない」


三成様は見たこともないくらい悲痛な面持ちで頭を下げた。


吉継様はまたため息まじりに言う。


「これだけは言っておく。お前は徳川には勝てない」


「そうか。だがオレはやらねばならぬ。秀吉様を、秀頼様を冒涜したあいつを、なんとしてでも懲らしめてやらなければ気が済まない」


「三成はいささか潔癖すぎる。そして熱くなりすぎる。少しは冷静になれ」


「吉継、なぜわかってくれないのだ?」


「それは私の台詞だ。断言してもいい。お前は負ける」


「それでも戦う」


三成様は聞き入れない。


「三成、これではダメか?私は上杉と徳川の仲を取り持って和睦させようと考えている。そうすれば上杉家は滅ぼされずに済む」


「すまないが家康にどうしても一太刀浴びせねば気が済まない」


それを聞いた吉継様は深いため息をついた。


そしてしばらくの沈黙の後、言う。


「お前は私を信用しているから、そのような大事な作戦を打ち明けてくれたのか?」


「当たり前だ」


「ならば、私もそれに報いなければならない」


「吉継、お前」


「お前が戦うというなら私も共に戦おう。どうせ私の命は永くない。ならば戦場で華々しく散る方が良い」


「かたじけない」


佐和山城主はさらに深々と頭を下げた。


「しかし、私がこれほど警告してもお前は戦う姿勢を崩さなかった。それならば、自分の命も大切なものも失う覚悟は出来ているのだろうな?」


「覚悟は出来ている…とっくに」


三成様は力強くそう言い、そして吉継様を見すえた。
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