理系彼氏!
話していると、彼の言うとおり目的地についた。
夏なのに少し肌寒い。

「寒くないか?」
「少しね。でも平気だよ」
「強がり」
「違うわよ!」

彼は私の頭に自分の上着をかけて私の頭にポンポン、と軽く叩かれた。
叩くとは違うけど・・うーん。
砂場にできた砂の山を手で軽く叩いて砂を固めるような仕草に似てると思うけど・・少し違うような・・。

「お、12時の方角を見て」

見ると、花火が上がってくる。
ヒュー・・・と言う音こそあまり聞こえないけど、たしかにあの広がる前の直線の光は見える。
まもなくして直線の光は大きな花になった。

「綺麗・・・」
「そうだね」
「うん・・ここ、来年もやってるのかな?」
「やってるよ。会場は違う場所だし、見に来れるよ。来年でも再来年でも」
「そっか・・来年はリュウちゃん連れてきたいな・・」
「リュウの体調と相談だな」
「うん」


私は、この時がすごく幸せだった。
こんな幸せをくれる人だからきっと喧嘩なんかないだろうって思った。
・・・でも、それは間違いだったってあとで気がつく。
それを、この時の私は知る由もなかった・・。
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