小さなあくび。



「必ず、届くと思う。

想いが強ければ、必ず。」






そう、笑う芙美子さんからは

寂しさがにじみ出ていた。






それからは、芙美子さんの仕事の話、俺の大学やバイトの話、
などから自分のこと、これまでの恋愛経験など様々なことを話した。








だけど、電話から一時間が経っても2人が戻ってくる気配はなかった。






「俺、昴兄が帰ってきたら、殴っちゃいそう、」


「仕事に支障が出るから顔はやめてあげなね。」




「どこならいいかな?」


「うーん、脇腹当たりかな。」




芙美子さんは優しく話の腰をおらず俺の話を受け止めてくれる。


自分だって複雑な気持ちが交差してるだろうに…、




「芙美子さんも、殴っていいよ?」



「あたし、どちらかといえば蹴りの方が得意かな」


「じゃあ、蹴りで。」






ピーんポーン




インターフォンが鳴り、

2人で玄関に駆けて行く。





扉が開き、

昴兄だけが顔を出す。






「笹は?」

「送ってきた、」




その言葉を聞き、俺は玄関を飛び出す。



昴兄なんかに、

負けてたまるか。









< 36 / 66 >

この作品をシェア

pagetop