車輪の唄

一両目

あの日の事を思い出したのは、ジリジリと焦げるように暑い夏の午後、ふと目にした街頭のテレビの懐かしいCMに、足が止まったからなのか。昔、よく君が食べていたお菓子のCMだ。

僕達が初めて会ったのは入学したての十三才の頃、隣のクラスであのお菓子を君は食べていた。

『一個いる?』
話しかけたわけでもないのに、僕にそれをくれたのがきっかけだった。
いきなりで慌てた僕は、
『あっ、うん。』
素っ気ない返事だった。でも君は笑顔で分けてくれた。ありきたりだけど、一目惚れをした。

部活が同じだった事もあり、二人の距離が縮まるのは簡単だった。よく喧嘩もした。

初めて喧嘩をしたのは付き合って最初の君の誕生日の放課後、体育館の前。大声で言い合う僕達を誰もが見ていた。
『今日は二人で食べに出かける約束でしょう?』
『そんなの聞いてねぇよ!もう友達と遊ぶって約束したから、無理だよ。』
『最低!私の誕生日忘れてたの?』
『うるさい!誕生日なんかまた来るだろ!』
素直に謝ればいいだけなのに、静かに泣いてる君を背に逃げるようにその場を去った。

その夜、君の家のポストにプレゼントを投げ入れた。ゴメンねの一言と共に。
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