笑う門にはオレ様がきた!!
「はぁ…あのさぁ、
曲がりなりにもお前
デザインの道、志している人間が
ラクだからって理由で服選ぶか…
それに何だよ、
この地味地味グラデーションは?
お前、いったい、年いくつだよ
ったく……。」


行くぞと言うと
師匠は私の手を引いて
そのまま歩き出した。


うわっ、手繋いでる。


し、師匠~~


手、手離しませんか…


とか弟子の分際で言えるわけもなく、
そのままマンションの
地下駐車場まで来てしまった。


私が繋がったままの手に
目線をやるとーーー


漸く手を繋いでいた事に
気づいた師匠が


「ほら、お前歩くのおせぇから
引っ張ってやったんだろ。
感謝しろっつーの。」


と言ってさっさと
真っ赤なスポーツカーに乗り込んだ。


「ボサっとしてねぇで、早く乗れよ。」


促されて急いで私も助手席に座り
シートベルトを引きながらふと、
師匠に目を向けると


耳まで赤くなっている師匠を
見てついついニヤけた。


「だ、か、ら、
ヘラヘラ笑うんじゃねぇって
ったく、ムカつく。」


そう言うと師匠は
お洒落なサングラスを掛け
スーっと車を出した。


私は何とも言えない
くすぐったさを覚えながら


案外師匠は真面目な人なのかも
と一人で納得していた。



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