ヴァージニティー
樋口に声をかけられたとたん、夕子の心臓が跳ねた。

「朝起きたら帰ってたんですからビックリしましたよ。

鷹宮さん、冷たいんですね」

樋口の言葉に、夕子は答えられなかった。

「好きな人以外、朝まで一緒にいたくない…って言うところですか?」

まるで拷問だと、夕子は思った。

「足早に家へ帰って弟に…」

樋口の言葉に、
「やめて!」

夕子は耐えることができなくて叫んだ。

「ああ、やっぱりそうですか」

そう言った樋口に、夕子は黙っていることしか他がなかった。
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