想い綴り







「ん♪いい感じ~♪ねぇこれ、駅前で歌ってもいい?」


「…別にいいけど…」


「やったぁ」










半分呆れ顔の俺に見せるのは

すでにウズウズしてるご機嫌な笑顔。









…ホント、学校でのあの態度ってなんなんだか。


全くの別人じゃん









「…普段からそんな顔してりゃあいいじゃん。結構モテてんぞ、お前?」




8割方損してるじゃん、そう続ける俺を横目に、






「ん?興味ない」








あっさりと呟いて、歌詞に添えたフレーズを口ずさむ。









…いっつも、この話になるとスルーなんだよな。










「…お前、いじめられっ子?」


「は?なにそれ」


「いや、なんとなく…クラスでのお前がホントのお前に見えないし」









駅前で見た…

あの、気持ちよさそうに歌ってる姿の方…

あれがホントの芹沢な気がするんだよな









壁に寄りかかって、

黙って見下ろす俺に、目線をあわせると


フッとため息混じりに笑顔を見せた。











「あのさ、オペラ歌手の芹沢 透子って知ってる?」








は?なにいきなり…


芹沢が切り出した質問に首を傾げる俺。







「芹沢 透子って…あれだろ?なんだかって映画の主題歌歌ってるって…」


「うん、それ」







40過ぎてんのに声がキレイだとかで、


映画が話題になるたび、テレビによく出てる…あれだろ?



でも、それがなんだっつ~の?










「…あれ…、うちのお母さん」



「へ~?……




って、はあぁぁ!?」










芹沢って…、



はあぁぁ!?







< 62 / 130 >

この作品をシェア

pagetop