君へ
君と幻と私
『未音(ミオ)―…』

優しい顔で、名前を呼んでくれた。


『大好きだよ―…』

照れながらそう言って抱きしめてくれた。



君は私に沢山の愛をくれた。


私は恥ずかしくて、一度も気持ちを言葉に出来なかった…



君はもう在ない。



好き―…

大好き―…



この言葉が君に伝わることはない。


どうして言わなかったんだろう…



涙が頬を伝う。



「椎(シイ)…大好きだよ」


そう呟いて下を向いた。




未音―…




声が聞こえた。

あの優しい声だ。



「椎…?」



ゆっくりと顔を上げる





…―やっと言ったね




そこには、そう言って優しく笑う君の姿…




これは私の心が見せた幻だろう―…




もう、幻でもなんでもいい



「椎、私ね…」



私からの最初で最後の言葉を―…君へ。




「…―愛してるよ」




君に抱きしめられた。



だけどこれは、幻なんだ―…




もし、君がここに在たなら、きっと、またあの優しい顔で名前を呼んで言うんだ。





…―俺も、愛してる。





END
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