××倶楽部

16


────「ほら、いつまで泣いてんだよ! 涙ふけよ」

「だって感動したんだもん」

「そうか? 俺はいまいちだったな……」


 一番すいてるから見てあげなきゃ可哀想、っていう安易な理由で選んだ映画は、原作者も無名で、たった三日間しか公開されてない人気のない映画。

 典はレイトショーとか、小さな映画館が好きで、人気の大作よりもそういうものを好んでみるから、それに付き合うのは慣れている。


「あのニューヨークのシーンは、もっと舞台を生かすべきだったな。すぐにベッドシーンに縺れ込むから感動も一瞬で終わる。あ、まさか、芽依はああいう緩い男がタイプとか? だから、おまえ騙されやるいんだよ!」
 

「なんで? 結人、すごくかっこよかった!」


 典は、だめだコイツ……、と舌打ちすると、私の手を掴んで歩きだす。


 ドキンと胸がなる。映画の中の素敵な彼より、今隣にいるのが典だと思うと余計に胸がドキドキした。

 もう意識しないで普通にできない。



「次は、飯にする? それとも買い物?」

「典が決めて」

「でた、優柔不断」  



< 256 / 378 >

この作品をシェア

pagetop