××倶楽部

 社長は女王様たちをかき分けて、ある部屋の扉の前まで私を連れてくると私の両肩を掴んだ。


 息をきらしながら、メガネの奥の瞳が切実に訴える。


「町田さん、アナタだけが頼りなんです! 実は今このドアの奥でスミレさんという女王様が閉じこもってしまいまして……どうか、説得をしてくださいませんか?」


「え、なんで私が?」

 
 自分を人差し指でさして首を傾げた。高いヒールの履いた女王様たちが腕組みをして私を睨みつけてきた。


「町田さんしかいません! だって、女王様は人を責めたり調教したりはできますけどっ! 説得とか超苦手ですからっ!」



「いや、ごもっともかもしれませんが……」   

「お願いです! 頼みの綱は町田さんだけです!」



 だから、社長のこの顔に弱いんだってば……。私は、やってみます……と自信なくスミレさんの部屋の前に立つ。


「す、スミレ様ぁ……ここのドアを開けてくれませんか?」



 私の弱々しい声に、女王様たちから、おぉ! と歓声が沸き起こる。


「町田さん、いいですよ! その調子です!」




 
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