××倶楽部

 典は、何も言い返さない。言い返せないんだと思う。

 昔っから、全然モテない私と違って典は女の子によくモテた。ガキ大将気質なとこが、女の子を次から次へと虜にするらしく、あれは忘れもしない中学二年生の冬。


 一緒に帰ろう! ってサッカー部の練習が終わった典の肩を叩いた。冷たい指先がひりひりとしていて、帰り道にコンビニで肉まん食べて帰ろうよ、って肩を叩いた。それが毎日の日課だったから……そしたら、典の奴、あっさりと


『芽依、わりー。俺、彼女と帰るから』って。


 その時、典は、学年で一番かわいい女子バスケ部のユメちゃんと付き合っていた。周りの友達は皆知ってたのに、私だけ知らなかった。



 ユメちゃんと別れたあとも、告白してくる女の子全員に典は頷いた。高校三年生のクリスマスには彼女が七人もいて、『やべー、女ってこぇー』と言いながら、うちにやってきて、お母さんとお兄ちゃんと私と一緒にケーキを食べてるような最低男だ。


 それに引き換えこのまっさらな過去をもつ私に(胸を張って言えることじゃないけど)典が文句を言う資格なんてない!



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