××倶楽部

 飲みかけの缶ビールを典に投げつけて、私は振り返らずにダッシュで典の部屋を出た。


「あら、芽依ちゃん帰るの?」と典のお母さんが心配そうな顔をした。


「お邪魔しました……」と消えそうなくらい小さな声で頭を下げた。


 典の、馬鹿!


 社長に比べたら、一ミリの優しさもないんだから!


 きっと、社長なら処女の私だって対等に見てくれているし、女王様たちを慰めるように優しくしてくれる。


 あの膝の上はさぞかし居心地がいいんだろうな。優しく頭を撫でられて、あの胸元に頬を寄せれば、全て満たされちゃうくらい幸せな気持ちにしてくれるんだろう。私にも少しでいいから、女王様たちみたいな度胸が欲しいだけだ。


 典のバカ。典は何もわかってないよ。



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