オレンジ色のかごの中
「野球、お好きなんですか?」


急に後ろから声をかけられ、一瞬ひるんだ。

誰かに見られたからってどうってことないはずなのに、どうしても顔を上げられなかった。


「はあ…まあ…好きです…ね。」


僕はまっすぐに揃えられた靴先を見ながら答えた。何故かこの綺麗な声の主の顔は見れなかった。


…まだみたいだ。



「北原先生、ちょっとお願いします~!」


「はーい!」


彼女は遠くから年配の女性が呼ぶ声に、やっぱり綺麗な声で返事をした。


彼女が去って行く安心感から、僕は顔をあげるとふと目が合ってしまった。

彼女は軽く微笑み、会釈をして走って行った。



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