オレンジ色のかごの中
「あの夏のことは…忘れられません。」


彼女の言葉が、僕の心のドアを乱暴にこじ開けた。


僕はこの世にあらぬ者を見るかのような顔でに彼女を見たに違いない。


「彼はあなたと一緒に大学に行って、あなたと一緒のチームに入ることを夢見ていました。」


彼女が誰の話をしているかは、考えなくともわかる。


僕の夢
僕の青春
僕の未来


僕がボールを投げることが出来なくなった理由のすべて。


彼女がどうして彼を知っているのか−そんなことはどうでもよくなるくらい、僕の心は乱れた。


「あなたの姿をグラウンドで見れなくなったのはとても残念です。私には理解ができなかった。」


彼女がそこまで話したことしか覚えていない。


気持ちが悪くなって、意識が遠のいて頭がグラグラした。


なんでなんでなんで!?!?


そればっかりが頭をよぎった。


なんで彼を知って?なんで俺にそんなことを?知ってるから?理解が出来ないってなんで?知らないからじゃないのか!?



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