最初から、僕の手中に君はいる
 耳元で囁かれる声に、身体が慣れてきたのか、力を完全に抜くことで、声が聴けるようになってくる。

 指はというと、下着の厚みを考慮しているのか、爪をたて、上下を強くこすりはじめていた。

「…………だよね?」

 何か言ったのか言わなかったのか、聞こえなかったが、それよりも、人指し指が素早く上下し、強く押さえつけ、更に右指で捏ねるという動作をプラスされたせいで、快感のことだけに集中してしまう。

 もう少し、というところまで、身体はすぐに上り詰めてしまう。

 息は絶え絶えになり、目を閉じて、必死に指からの少ない刺激を受け、到達しようと身体が勝手に準備をする。

「彩……」

 足にだんだん力が入ってくる。足指で力を逃がさないと、うまく、身体が弾けないことは、長年の感で分かっている。

「好きだよね、僕のこと」

 耳に吹き込まれ、更に唇で覆われた。

「僕のことが好きだから、こんなに感じて、もういきそうになってるんだよ」

 言われてみると、そうかもしれない、と思ってしまう。

 それよりも、限界が近いことの方に全身が傾いてしまっている。

「彩……僕の好きよりも、彩が僕を好きの方が上だよ、きっと」

 そうかもしれない……。

「せめて、一言聞かせてほしいな」

 もう少し、もう少し。

「好きって言ってほしいな」

 もう少し、もう少しで……。

「ほら、言って。好きって」

 あ、手の動きが急に遅くなった……。

「好きって言ったら、いかせてあげる」

 言うだけ言って、動きが徐々に早くなる。

「彩。ほら言って」

 身体に同調した指の動きに戻り、

「……すき」

 簡単に口から出てしまう。

「いくのと交換じゃないと言えないなんて……」

「ダメ……ダメ……」

「強情だね、彩」

「も、ダメ……」

 指の動きが、最高潮になり、畑山の息も荒くなる。

「もうダメ?」

「も……」

「彩……」

「いやっ……んッ!!」

 身体が大きく弾けた。

 畑山は余韻を楽しませるように、何度も指をゆっくり往復させてくるが、その度に冷たい下着が肌にあたる。

「彩、何も言わないんだから」

 頬にキスをされながら、思う。何か聞かれていただろうか?

「まあいいよ」

 畑山はまだひくついている身体を背後からぎゅっと足も使って抱きしめてくる。

「明日は約束通り、指輪買いに行こうね」

 そんな約束、いつしたっけ……?

 そう思ったが、思い出すことが面倒になり、ただ快感に溺れて目を閉じた。

(つづく)

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