甘い唐辛子


知らなかった……


私だけじゃない。

維十も悩んでたんだ……



私はホッと安心したと同時に、急に維十が愛しくなった。


キツく締められる心臓は、いつもの私では考えられない程速く打って。



前を進む、維十の背中を無意識に見つめていた。




「なんだ、維十だけじゃないんだ。」

「え?」


強ばっていた声が、優しいものへと変わっているのに気づき、隣にいる長身の男を見上げると、その人も私を真っ直ぐに見下ろしていた。


「維十の片思いじゃないんだ、と思って。良かった。」



ニッコリと微笑む笑顔には、本当に維十を思っているようで……



「維十は、幸せ者だな。」

「今はもっと幸せだと思うよ?」



霞澄さんが居るからね



海の言葉に、頬の筋肉が動いたのがわかった。



海が驚いた顔をしたが、そんなの気にできなかった。



嬉しさと恥ずかしさ、半々が胸を占めて…

その裏には、維十への愛しさが大きく両手を広げていた。



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