甘い唐辛子
▼記憶▼


月蝶に行った日から、俺はずっと気になっていることがある。


あの女が最後に言った、「藤成」と言う言葉。

きっと、何かの、誰かの名前だ。


俺は、その言葉がずっと引っ掛かっていた。
どこかで聞いたことがあるのには、間違いなかった。


「藤成…藤成って…」
3時間目の時間、授業をサボり、屋上で空を見ながら脳みそをいつも以上に回転させていた。


空には雲1つ無く、爽快と言う言葉がぴったりといった感じの空だった。


暫くボーっとしていると、映像が頭をよぎった。




………………まさかな…


俺は頭を振り、その考えを取り去ろうとした。

無駄なのはわかっていたが、どうしても、体にはいった力を抜きたかった。


あの悪夢が、また俺を襲うのか…

またあんなに泣くことがあるのだろうか…



不安は俺を締め付けるばかりで、真上にある爽快の空とは正反対なこの気持ちを、どうすることもできなかった。



< 18 / 212 >

この作品をシェア

pagetop