甘い唐辛子
▲復讐▲
「やはり、来たか。」
月蝶の扉の前。
あの女、霞澄がダウンジャケットに身を包み、立っていた。
意気込んでいた俺は拍子抜けした。
「オーナーには言ってある。場所を変えよう。」
ただそれだけを言い、霞澄は俺に背を向けて歩き出した。
今、霞澄は俺に背を向けている。
今ならいつでも殺れるはずだ。
しかし、体が動かなかった。
殺せないというオーラが背中から感じられるからか、背中からなんて卑怯なことをしたく無かったか…
どちらにしろ、俺は殺すことができない。