溺れる唇

「・・・そう」

私は言って、ノートPCを閉じる。

「ちょっと除けてくれる?」


この山積みの資料もだけど。

まず、その顔を。


「あ、ごめん!」

片付けだした裕馬のシャツから、
彼の匂いがした。



日なたの匂い。

太陽みたいな、私の好きだった人。


やっぱり、香水つけたりしないんだね。



懐かしい匂いに微笑み、私は少しすっきり
したデスクの上で作業を始めた。


< 30 / 344 >

この作品をシェア

pagetop