幸せ家族計画


 駅前から細い路地を抜けると辿りつくのは、以前はよく飲みにきていたブルースバー『Hellebores』。

その扉を久しぶりに開けると、心地良いピアノのメロディとが聞こえてきた。


「いらっしゃいませ」


相変わらず半袖姿の若いオーナー・倉崎さんと年配の店長が、にこやかな笑みを浮かべる。

ここは、結婚式の後2次会もやったところだし、常連でもある俺は彼らとは結構親しい。

カウンターには、見慣れた顔がそろっている。

一人はたまにここで出くわす常連客の相川進。
彼は有名な作家だ。

容姿の良さを買われて、某有名洋品店の広告にも出ているためか、その職業に反して巷に顔が知られている。


そこから一つ開けた席に、俺を呼びだした男がいる。

二人は顔見知りなのか、二言三言話しているみたいだ。


「よう、達雄。なんだよ一体」


そう言いながら、相川さんとは反対側の達雄の隣に入る。
軽く会釈すると、相川さんは緩く笑った。

見栄えのする男だな、なんて思う。
俺より若いんだろうな。

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