一緒に暮らそう
「大丈夫ですか」
 長身の男が紗恵に声を掛ける。
「……はい」
 彼女はしゃがみ込んだまま、顔も上げずに答える。
 依然として体が動かない。だから、本当は大丈夫じゃない。

「立てますか」
「多分、立てると思います」
 紗恵は何とか立ち上がろうとするが、体の震えから足がふらついて上手くいかない。

「おっと」
 彼が紗恵の体を支える。
「手を貸しますよ」
「すみません……」
 彼女は大人しく彼の助けを借りる。傍らでそのたくましい腕の力を感じる。

「ケガはありませんか」
「大丈夫です。ただちょっと、ショックで……」
 足元がおぼつかないのだ。
< 22 / 203 >

この作品をシェア

pagetop