一緒に暮らそう
 彼は紗恵を店の中に座らせると、自分はラップとガムテープを持ってガラス戸の穴をふさいだ。

「あの、お客さん。もうこんな時間ですよ。お帰りにならなくても大丈夫なんですか」
 紗恵が黙々と作業をする彼の広い背中に声を掛ける。
「いいから、いいから。これくらいの作業すぐ終わるから」
「でも……」
 常連の客にこういう後始末をさせるのはしのびなかった。
「いいからと言っているだろう! そんなことより、あなたは早く携帯で警察に連絡をしてください」
 男性が紗恵を振り返る。

 彼女は座り込んだまま目を伏せている。
「どうしたんですか。携帯がないんですか。なんなら僕の携帯を……」
「いえ、いいんです。警察は」
 紗恵が静かに言う。
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