一緒に暮らそう
 夜10時過ぎ。
 いつものように、仕事を終えた新多は自宅のマンションに帰ってきた。

 ドアを開けると、玄関の土間スペースには、きれいに磨かれた革靴が揃えて置いてある。

 キッチンからおいしそうな夕餉のにおいが漂ってくる。毎晩、何が出てくるのかが楽しみになっていた。
 衣が揚げられた香ばしいにおいからすると、どうやら今夜は揚げ物のようだ。

「お帰りなさい」
 エプロン姿の紗恵がほほ笑んで出迎えてくれる。
 仕事の疲れが癒される瞬間だ。

 新多も「ただいま」と返す。
 まるで家族が、いや夫婦が交わすようなやり取りだ。
 
「今日はコロッケか」
 テーブルの上にどんと置かれた大皿の上には、揚げたてのコロッケがのっている。
「そうなんです。新じゃがの季節だから作ってみようかと思って」
「うまそうだな」
 視覚と嗅覚が刺激されて、口の中が潤ってくる。
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