一緒に暮らそう
 玄関で物音が聞こえて新多は目を覚ました。
 翔子が廊下を歩いてくるのが聞こえ、次に寝室のドアが開くのが聞こえた。

「起きてたの?」
 翔子が優しい声でたずねる。
「ああ」
 新多はベッドに横になっている。
「誰か来ていたのか。人の話し声が聞こえたようだけど」
「うん。ちょっと同じ階の方が来ていたのよ。昨日、部屋の模様替えをしていたそうで、音がうるさくなかったかって訊いてたわ」
「模様替え? 別に近所からは何も聞こえなかったけどな」
「だったらいいのよ。あなたは病気だから私が代わりに応対しておいたわ。別にご近所づきあいはないんだから、私が顔を出しても問題はないでしょ?」
「そうか。それはありがとう。近所の何て人?」
「ごめんなさい。名前は忘れちゃったわ」
「女の人か」
「そうよ。主婦だと思う」
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