【完】君と流れ星を。
でも、まさかこの歳になって説教されるなんて思ってなかったな。

この店は好きだけど、さすがに説教された後は居心地が悪い。


店を出ようと窓の外を見て初めて雨に気が付いた。

そうか。倉地さん、それで店の奥に戻ったのか。

説教した相手である俺が、夕立で足止めされてここにいても気まずくないように。


ったく、どこまで気がきく人なんだ……勝てる気がしないな。



俺は小さく流れるジャズと屋根を叩く雨音のリズムの中、タバコに火をつけた。

いつものライターじゃなく、マッチで。



灰皿に捨てたマッチは、燃え尽きることなく、しばらく燻って、静かに消えた。
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