無口な彼のカタルシス
ポケットの中の丸まった紙を抜き取った。


それを一旦広げて、丁寧に小さく畳む。『彼』はそんなわたしを、ただじっと見つめていた。



(こうすれば綺麗に入るでしょ?)



元あった場所に小さく折ったそれを戻した。ポッコリ膨らんでいたポケットはペタンコになって、何故だかわたしの方がそれに満足感を覚えた。



ポンポンと。スッキリしたそこを軽く叩いてから見上げれば、『彼』はバツが悪そうな困ったような顔をして、それでも小さく頭を下げた。



思わず、頬が緩む。

喜んでくれた……かな?



ゆっくり身体の向きを変え、そうして歩き出した『彼』。その背中を見詰めながら、数歩後を歩くわたし。




真っ赤な太陽がほんの少し遠山に隠れて、まん丸じゃなくなった。



俯きがちに歩く『彼』の背中は、ほんの少し寂しげに丸まっていて、でもオレンジ色に染まっているから照れているようにも見える。





『彼』の背中は――


口以上にものを言う。






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