無口な彼のカタルシス
郵便受けの蓋から手を離せば、わたしの手首を掴んだ『彼』の手はハラリと落ちた。



わたしがゆっくり立ち上がれば、それを見届けてから、また首が折れそうなほどに項垂れてしまった『彼』。その前をテクテク歩いて移動し、隣に並んでわたしも腰を下ろした。



そしたら『彼』の身体がほんの少しこちらに傾いて、わたしのセーラー服の袖と『彼』の学ランの袖が触れた。



もしかして『彼』は、わたしにもたれ掛かっている?



気のせいかもしれないし、気のせいじゃないかもしれない。


そのぐらいに曖昧な圧だったけど、苦しいぐらいに嬉しかった。





『彼』は――


時々、コッソリ甘える。






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