無口な彼のカタルシス
それを両手で開いて、『彼』の顔を映して見せてあげる。



「なら……書け」


『彼』は、呆気なく抵抗をやめてしまった。



なんだ、つまんない。


だけどもそんな『彼』を、もっともっと大好きになった。



「お前の声、文字で聞かせろ」


『彼』はそう言って優しく笑う。



“読ませろ”じゃなく“聞かせろ”。



そう表現した『彼』が、

泣きたいぐらいに愛しかった。





わたしは――


無口な『彼』よりもっと無口だ。






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