無口な彼のカタルシス




三年生になって初めて、眞柴英則(ましばひでのり)くんと同じクラスになった。



小学校は違うから、眞柴くんがどんな幼少期を過ごして来たのか、わたしは知らない。



中学校に入学した時、初めて目にした彼の制服姿は既に、どこからどう見ても“不良”のそれだった。



そんな眞柴くんを怖がって、誰も彼に話し掛けないし、もちろん眞柴くんから話し掛けることもなくて。


いつも孤立している彼を、クラスの違うわたしは遠目に眺めていた。

そうして、何故だか自分が傷付いたような気になって、少しだけ悩んだりしたこともあった。



三年生になって同じクラスになると、眞柴くんの悪口まで聞かされるはめになった。



「今時ヤンキーなんか流行んないよ。ダッサ」


「昭和からタイムスリップして来たんじゃない?」


「テレビドラマの見過ぎー」


などなど。



飽きることなく語られる中傷。そんな時、わたしはいつも聞こえないふりをした。


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