無口な彼のカタルシス
そのノートを見せた時の眞柴くん。

思い出すたびにおかしくて、自然と笑いが込み上げる。



カチコチに固まって、口も半開きで、呆然として。

英語ノートの四本線の上に書いたわたしの文字を、ずうっと見詰めていた。



長い長い沈黙の後、ようやく口を開いた彼。


「わたしも……です?」


一人称、まさかの“わたし”に思わず吹き出してしまった。



きっと多分、日本語を英語に訳して答えようとして、うまくいかずにまた日本語に戻して、そうして咄嗟に出たのが“わたし”。




一人称が“わたし”だろうが“ぼく”だろうが“おれ”だろうが、眞柴くんの返事はOK。


ただそれだけで、わたしは充分だった。






無口な『彼』は、たくさんの叫びを胸に秘めていて。


だから、

『彼』よりもっと無口なわたしが、それを綴ろう。







無口な彼のカタルシス







「ババア来るって。授業参観」


(良かったね)







h24.8.18 Fin.






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