鬼滅羅〈キメラ〉
私は、震える手で、啓吾の青白い頬を撫でた。
冷たかった。

何故?
なぜなの?啓吾……。

私はあんたを……。

あんたを殺そうとしたのに。



私は少年の肩にすがりついた。
傷口がなま温かい。

「ごめんね……」

少年の腕が、私の背中にまわされた。

ああ。
あんたはこんな母を、受け入れてくれるの?啓吾……。



私は、最初から、あんたを愛してやらなかった。

私の人生を狂わせたあんたが、憎かった。

ほんとうは、私が自分で選んだ道だったのに。

あんたという存在を以て、私自身が狂わせたのだ。

私と関係を持った、数多の男たち。
彼らの運命を私が左右しているような錯覚の中に、自分の足場を築こうとした。

愚かだった。

今こうして、自分自身の生き死にすらままならない。

ごめんね。

こんな私のもとに生まれなければ、もっと幸せになれたろうに。

最期まで、愛せなくて、ごめんね。



パチパチと、肉のはぜる音。

ああ、もうこの階にも火が廻っているのだ。

彼方から、サイレンが聞こえてくるころには、私の意識はもう、無いのだろう。
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