あなたを好きになってもいいですか?―初恋物語―
いつもの図書室

ちょっと違うのは、勉強のために利用しているんじゃなくて…雨宿りをしているだけ

傘を忘れてしまったから、雨が止むのを待っているの

ついでに勉強もしているけど…

止みそうにないなあ

私は顔をあげると、暗くどんよりした厚い雲を見た

あまり遅くなるのも嫌だけど、傘もささずに駅まで走るのもどうかと頭を捻ってしまう

早く帰りたいなあ

胃が痛くなってきたから、家に帰って薬を飲みたいよ

いつも持ち歩いている薬が、きれているのに気付かなくて…持っているとずっと思いこんでいたから

鞄の中を漁って薬がないってわかったときは、すごくショックだった

キリキリと痛む胃を左手で押さえると、小さくため息をついた

「無理しすぎなんじゃねえの?」

コトンと水のペットボトルと漢方の胃腸薬が私の右手脇に置かれた

ぱっと声のしたほうに顔をあげると、制服を着崩した霧島君が立っていた

「三崎が持ってる市販の薬でいいなら、飲めよ。少しは楽になるだろ」

「え?」

「顔色が悪りぃんだよ」

「あ、ありがとう」

「別に。さっさと飲めよ」

私の椅子をガラガラとひいて、どすんと座った霧島君が薬を指で抓むと、私の前にポンと置いた

「ほら」

「あ…うん」

私は漢方の胃腸薬を飲むと、霧島君が用意してくれた水をごくごくと飲んだ

漢方独特の苦みを噛みしめながら、私は胃の中に流れ込んでいく冷たい水を感じた
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